高温配管材料の選び方とは？ ASTM A106 Gr.BとAPI 5L Gr.Bの化学的組成、機械的特性、適用性の比較

石油化学、電力、ボイラー、圧力容器などの産業分野において、高温用配管材料の選択は設備の安全性、信頼性、寿命に直接影響します。ASTM A106 Gr.BとAPI 5L Gr.Bは広く使用されている炭素鋼無継ぎ目鋼管規格ですが、その適用シーンや性能特性には顕著な違いがあります。本記事では、化学的組成、機械的特性、適用温度範囲、主な用途などを比較・分析し、エンジニアや調達担当者がより合理的な材料選択を行う手助けをします。

1. 規格の概要と主要な応用
規格 ASTM A106 Gr.B API 5L Gr.B
適用範囲 高温高圧配管（ボイラー、熱システム、ペトロケミカル） 石油および天然ガス輸送（長距離配管、集約配管）
製造プロセス 無縫鋼管（Seamless） 無縫鋼管（Seamless）または溶接鋼管（Welded）
典型的な用途 蒸気配管、高温プロセス配管 石油およびガス輸送、低圧流体輸送
主な違い：

ASTM A106 Gr.Bは高温高圧条件向けに設計されており、蒸気、過熱温水、高温の油輸送に適しています。

API 5L Gr.Bは主に石油およびガス輸送用であり、長期的な高温安定性よりも溶接性能と低温タフネスに重点が置かれています。

2. 化学的成分比較（％）

元素 ASTM A106 Gr.B API 5L Gr.B 影響分析

C (炭素) ≤0.30 ≤0.28 A106はやや高い炭素含有量を持ち、高温強度を向上させますが、溶接性は低下します

Mn (マンガン) 0.29-1.06 0.90-1.20 API 5Lは高いMn含有量を持ち、低温衝撃靭性を向上させます

P (リン) ≤0.035 ≤0.025 API 5Lは低いP含有量を持ち、冷間脆性のリスクを低減します

S (硫黄) ≤0.035 ≤0.015 API 5Lは低いS含有量を持ち、溶接品質を向上させます

Si (ケイ素) ≥0.10 ≥0.10 同様で、耐熱性を向上させます

結論：

API 5L Gr.BはPとSの含有量についてより厳しい制限があり、溶接や低温環境に適しています。

ASTM A106 Gr.Bは高温強度を向上させるために若干高いCとMnを許容していますが、溶接時に事前加熱に注意が必要です。

3. 機械的特性の比較
性能 ASTM A106 Gr.B API 5L Gr.B 差異
引張強度 (MPa) ≥415 ≥414 基本的に同等
降伏強度 (MPa) ≥240 ≥241 基本的に同等
延伸率 (%) ≥30 ≥30 同じ
衝撃試験 通常不要 可能の場合（低温環境など） API 5Lは低温靭性により注目しています
高温性能の比較：

ASTM A106 Gr.Bは425°C以下の長期使用においても良好な強度を維持し、ボイラーおよび熱管路に適しています。

API 5L Gr.Bには明確な高温性能要件がなく、長期的な高温使用により強度が低下する可能性があります。

4. 適用温度範囲
材料 推奨温度範囲 制限事項
ASTM A106 Gr.B -29°Cから425°Cまで 425°Cを超える場合は合金鋼を考慮すべきです
API 5L Gr.B -20°Cから200°Cまで 高温では強度が急速に衰えます
重要なポイント:
ASTM A106 Gr.Bは、蒸気システムやホットオイルパイプラインなどの高温配管の第一選択です。
API 5L Gr.Bは、通常または低温での油とガスの輸送に適していますが、高温条件では慎重に評価する必要があります。

5. 材料選択の推奨事項
ASTM A106 Gr.Bを選ぶ場合
✅ 高温条件 (>200°C、ボイラー、ヒートエクセンジャーなど)の場合
✅ 高圧蒸気またはホットオイル配管の場合
✅ 長期的な高温安定性が必要な場合

API 5L Gr.Bを選ぶ場合
✅ 石油および天然ガスパイプラインの場合
✅ 低温環境 (衝撃試験が必要)の場合
✅ 高い溶接要件を持つプロジェクト

6. 結論
高温高圧配管（発電所、石化プラントなど）→ ASTM A106 Gr.B （高温性能が優れています）

油田・ガス田の配管（長距離配管、集積・輸送システムなど）→ API 5L Gr.B （溶接性と低温靭性が優れています）

プロジェクトが高温と同時に溶接要件を伴う場合、総合的な評価が必要であり、必要に応じて事前加熱または溶接後の熱処理を行い、安全性を確保します。